ものかき夢想

ひたすらものかき

裁判員に選ばれてさっき任務完了してきたので色々書きます

 私の中で架空の出来事と思っていた裁判員裁判。どういうわけかその裁判員に選ばれて、裁判に参加して、量刑を決めて、判決を下して、帰って、晩御飯を食べて、お風呂に入ったので、事の顛末をここに記すことにします。カレーライス美味しかった。

 

 

1.候補者リスト投入のお知らせ

 いきなり裁判所に来い、という連絡が来るわけではありません。まず「この1年の間、貴方を裁判員として呼ぶかもしれませんのでよろしくね」という旨が書かれた大きめの封筒が届きます。私は今年の1月中旬あたりにきましたので、対象期間後わずかのところで選ばれてしまったわけです。

 この段階では特に何かしなければならないというわけではありません。封筒の中身は「裁判員制度について」とかその辺の冊子が入っています。あとは、強いていうなら「覚悟しておれ」という無言の圧力くらいでしょうか。

 ちなみに、裁判員は都道府県ごとに選ばれ、上に述べた候補者から選ばないといけない、という決まりがあるらしいです。ので、この第1ステップは比較的多くの人が体験するらしいです。

 

2.候補者として正式に選ばれる

 前述の候補者リストに選ばれてからしばらくすると、また大きな封筒が送られてきます。おめでとうございます、正式に裁判員候補者として選ばれました。私の時は12月なので、本当に「忘れた頃にやって」きました。

 封筒の中身は相変わらず「裁判員裁判について」が入っているのですが、今回はもうひとつ加えられています。「質問票」といって、要するに「裁判員として参加できない正式な理由はありますか?」という質問に答える紙です。テレビとかでやってますね。政治家や自衛隊員だったら参加できません、というアレです。何が対象かというのは同封されている冊子に記載されているのでそちらを参照ください。こちらの質問票は同封されている封筒で返送する必要があるので忘れないように。(私は忘れそうになって焦りました)

 そしてこちらの封筒には「裁判員選出の抽選会がこの日にあるから来てね。来なかったら罰金バッキンガムだから!」という書類も入っているので見逃さないようにしてください。行かなかったら本当に罰金バッキンガムです(10万円以下)。

 

3.裁判員を選出するための抽選会に参加する

 普通に平日にやるので、ビジネスマンさんはお仕事を休んで行ってください。

 私の場合は朝の9時半から午前中いっぱいかかりました。具体的なスケジュールは

  1. 裁判員裁判とはなんぞやのDVD放映
  2. 今回の裁判に参加する人(裁判長とか弁護人とか)の紹介
  3. アンケートの記入
  4. 個人質問
  5. 抽選発表

 こんなところでしょうか。

 1.は「裁判員裁判はこういう趣旨でやってますよ」といったようなDVDです。よくある感じのです。

 2.で裁判の概略とともに今回の裁判に関わる人達が紹介されます。裁判長・弁護人・検察官・書記官といった具合でしょうか。この段階では被告人は登場しません。

 3.のアンケートですが、ここでも裁判員になれない理由を聞かれます。「あれ、この前の質問票と同じ内容じゃないの?」違います。質問票では「現在の職業や年齢といった点において裁判員になれない理由はある?」という内容に対して、今回は「どうしても外せない急な用事が入ったり、今回の裁判で平等に判断出来ないといった理由はある?」という趣旨の内容が聞かれます。というのも、裁判の概略はこの日初めて聞かされます。今回の被告人が自分の関係者(親族や深い関係の人等)だったら平等に判断できるか怪しいですよね?そういう理由でも辞退できるので、この場で聞いてしまいます。

 4.の個人質問では、裁判において気になるところを裁判長に質問する時間が与えられます。ここでどうしても気になるところがある人は色々と聞くことが出来ます。

 こうしたステップを踏まえて、いよいよ抽選が始まります。とは言っても、我々が何かするわけではなく、裁判所の人たちが裏でパソコンを使って抽選をするらしいです。なんだか怪しいですが、まぁいいとします。

 裁判員に選ばれるのは6人。加えて補充裁判員(補欠)が2人の計8人が選ばれます。補充裁判員は裁判によって人数が変わってくるらしいです。私の時は20余人が候補者として参加していたので選ばれる確率はおよそ1/3。今回私は運悪く幸運にも裁判員として選出されたわけです。

 

4.裁判員として宣誓する

 抽選会の後、裁判員として選ばれた私達は別室行きとなります。地下労働施設で働かされるのかと思いきや、ペラ紙を持たされて宣誓をさせられました。「ぼくたち、わたしたちは、裁判員として公平な判断をすることを誓います」みたいな感じのです。これで正式に裁判員としての業務が始まります。次の日から。

 

 ここから先は正式に裁判が始まるのですが、今から書く事例はあくまで「私の場合」であることをご留意ください。 

 

5.口頭弁論・証拠調べ・尋問・論告弁論

 いよいよ本格的に裁判が始まります。ここから先はドラマやゲームでよく見る感じの流れですね。

 まず口頭弁論。ここでは被告人の名前や職業などを言う時間になります。あとは今回の裁判の概略が検察側から述べられます。誰が何をしてどうなった疑い、といった具合。

 次に証拠調べ。ここでは事件に関係のある証拠が弁護側・検察側から次々と登場します。逆転裁判によくあるアレです。証人がいれば、ここの段階で登場します。

 その証拠に関して弁護側・検察側からの尋問が始まります。双方から被告人に対してわからない部分を徹底的に聞きまくります。尋問が終わったら裁判側、つまり我々も何かわからないことがあれば聞くことが出来ます。

 最終的に証拠が出揃い、被告人に聞きたいことも聞き終わると、論告弁論が始まります。被告人に話を聞いた上で検察側はこうこうこういう理由で懲役何年を求刑します。いや、弁護側はこうこうこう理由で無罪、もしくは減刑を求めます。といった内容を言います。で、最終的に被告人から何か言いたいことは?というよくあるアレが終わると、いよいよ裁判員である我々が本格的に動きます。

 

6.評議

 さて、弁護側検察側そして被告人が色々言っていたけど、何が本当で何が嘘なのか、そして何を主張として通すべきかを裁判員および裁判官みんなで議論します。何か気張る必要はなく、わからないことがあれば裁判官さんがなにかしらメモしてくれていますので気軽に聞きましょう。書き忘れましたが、裁判官は裁判長含めて基本的に3人います。

 本当はここを詳しく書くべきなのですが、実はここで永続魔法カード「守秘義務」が発動します。このカードは評議フェイズの内容を一切口外してはならない効果を持っていて、効果は永続的に続きます。内容が明かせない秘密の談合は2日半続きます。

 

7.判決

 裁判側で量刑が決まり、いよいよ被告人に判決を言い渡します。ここでは裁判側で評議した内容を主文として被告人に伝えます。「主文、被告人を懲役何年ならびに罰金何万円とする。以下、当裁判所の判断ですが……」と続きます。これが終わると裁判員としての業務は終了です。おつかれさまでした。

 

 

 さて、今回の私が関わった裁判は、被告人が登場する口頭弁論から論告弁論までが約2日半、評議に約2日半、そして判決に1日(時間的には10分程)の、計6日かかりました。その間に土日を挟みましたので、実に1週間以上かかった事になります。その間、当然会社はお休みしなければなりません。大変でした。

 そう、その会社へのお休みについてですが、基本的に国が定めた事柄なので休めなければなりません。どうしてもという場合は抽選会の時に聞いてくれます。念の為に裁判所は「出頭証明書」を出してくれます。「あなたは下記の日程で裁判所に来て裁判官として働いてくれましたよ」という内容です。そのあたりが不安な方はご安心くださいませね。

 そうそう、弁護人が「異議あり!」とか言ったり突然降霊術を使ったりしませんでしたし、検察側はコーヒーを飲んだり鞭でビシバシしませんでしたし、突然劇場が始まったりとかいう流れは発生しませんでした。ちょっと残念。

 あとは、そうですね、あぁ日当。そう、日当が出ます。裁判員として働いた場合、1日あたり1万円以下の日当および交通費・旅費が後日振込まれます。人によっては割にあわないかもしれませんが、1週間働けば大体5万円くらい振り込まれるわけです。この年末にポンと出てくるのはちょっと嬉しいかもしれません。クリスマスは怪しいですが。

 最後に、裁判員には裁判員バッジというものが配られます。

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こんなん。

 実はこれ、シリアルナンバーが刻まれているのでなんとなく特別感が味わえます。プレミアがつく、かどうかはわかりませんが、持っておけば後世の自慢にはなるでしょう。

 

 

 裁判員は裁判の中で初めて聞く内容を素早くメモしてまとめ、議論し、真実を見抜くという、とても頭に負荷のかかる作業の連続でした。しかも逆転裁判のように証拠が予め揃いきっているわけではなく、憶測で話を進めていかないといけない上で、有罪か無罪かもわからない人間の未来を決めなければなりません。私達の議論の結果が裁判長の口に乗って被告人に飛んでいき、被告人の今後が決まるのです。とても精神的に負荷がかかります。

 ただ、とても良い体験をしました。というのも、こういう司法の場に参加するという経験はあまりしたことがありませんので。現実の裁判は、ドラマやゲームのようにはいきません。筋書きなんて決まっていません。私達の一声で1人ないし複数人の人生が決まる体験は、そうそうできるものではありません。ブラウン管の向こう側の世界ではなく、リアルの世界であることを認識させられました。

 

 あまり突っ込んだ話が出来なくて恐縮ですが、この辺で締めておきますかね。では。

 

 

 

逆転裁判5

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