24
「ご主人」
「なんだ」
「今日誕生日ですよね」
「そうだ」
「わたくし、すっかり忘れておりました」
「唐突にしてメイドにあるまじき失態をサラッと言うんだなお前は。別に構わんが」
「馬鹿な。メイドが主人に対して忠誠を誓うなどというお花畑全開な思考回路を持っているのは日本人だけです。愚かな」
「その馬鹿で愚かでお花畑全開な日本人に雇われてる気分はどうだ」
「最悪です。いつかこの屋敷を乗っ取ってやります。乗っ取ります」
「そうかよ。精々頑張れ」
「次の誕生日は河川敷ですね」
「一体何が起こるっていうんだ」
「ところでご主人」
「聞けよ」
「今日で何歳になりますか」
「24だったかな」
「うろ覚えですか。頭大丈夫ですか」
「お前は本当に俺のメイドか?」
「当然です。具体的にはハウスキーパーです」
「ハウスキーパーねぇ」
「メイド長です」
「メイドはお前一人しかいないがな」
「この館で一番偉いです」
「さりげなく下克上するな」
「あとご主人」
「聞けよ」
「24って中途半端に若いですね。もっといってるかと思いました」
「余計なお世話だ。24はまだ充分に若いし、年だったらお前の方が若いだろ」
「わたくしはまだ16です。ピチピチなのです。ナウいヤングなのです」
「……本当に16なのか?」
「シバキますよ」
「って言いながらローキックかますのやめていただけませんか痛い」
「いいえやめません。神がご主人を許しても、わたくしは神を許さない」
「さりげなく攻撃対象変わってるし」
「神を倒すついでにご主人を捻っておきます」
「片手間っ」
「それとも投擲武器にしましょうか」
「人間を投げて攻撃する爬虫類がいたような」
「黙れ」
「ひっ」
「そういえばご主人」
「まだ何かあるのか」
「実はケーキを作ってあります」
「なんだ覚えてたんじゃないか」
「しかし」
「なんだ」
「ケーキを作ったのはこれが初めてなのです」
「そうなのか。まぁいいや。ありがたく……」
「致命傷で済めばいいですけど」
「え」
「いや、大丈夫だと思いますけど、いやしかし」
「致命傷って何」
「やはり、"アレ"は入れないほうが良かったかも」
「"アレ"って何」
「さぁご主人、共に誕生日を祝おうではありませんか」
「聞けよ!!」
…………
……
…
本日付けで24歳になりました。
実は平成元年生まれです。
生年月日で唯一漢字が使える世代です。
せめて四半世紀歳までは生き残りたいものです。
これからもよろしくお願いします。